新米の冒険者も、ときには森へ足を踏み入れる。
もちろん無茶はしない。奥地には行かず、森の入り口近くで慎重に探索する。
とはいえ、魔物の気配は常にそこにある。
風の音ひとつにも神経を尖らせ、草の揺れにすら身構えてしまう。
「マズい」と思った瞬間、本当にそれは現れた。
コボルトだった。
獰猛な種ではないが、油断は禁物。魔物には違いない。
逃げなければと身構えると、意外な行動を見せた。
コボルトがこちらに向かって、静かに手招きをしてきたのだ。
罠かもしれないという不安を抱えながらも、どこか見覚えのある姿に胸がざわつく。
少し前、怪我をして動けなくなっていたコボルトの子どもに出会ったことがあった。
手当てをしてやると、その時は驚いたように森へ逃げていった。
目の前にいるのは、あの子と、もう一匹。たぶん親なのだろう。
子どもが岩の前で立ち止まり、こちらを見上げて指を差している。
まるで――「ここ掘れワンワン」だ。
思わず笑ってしまいそうになりながらも、ピッケルを手に掘ってみると、
岩の下からいくつかの宝石が顔を出した。
驚いて振り返ると、コボルトたちはもういなかった。
深い森の影の中へ、音もなく姿を消していた。
あれは、恩返しだったのかもしれない。
街に戻って、商人に鑑定してもらう。
「うーん、これは原石には違いないけど、小粒すぎるね。しかも欠けも多い。残念だけど、値段はつかないな」
少し残念な気持ちになりかけたけれど、なぜか笑ってしまった。
ほんの少し、胸の奥があたたかくなった気がした。
【イラストレーター】
雨音はるじ
新潟在住のイラストレーター・絵本作家。
メルヘンチックな子どもや動物のイラストを描いています。
童話とピアノと新幹線が好きです。
今回は「ここほれワンワン」のカードの場面を想像して描かせていただきました。
神秘的な森での、ちょっとほっこりするようなワンシーンが描けていたらいいなと思います。
▶︎ 雨音はるじさんのウェブサイトはこちら
https://amaneharuji.myportfolio.com/
【文章】
SATO TAKERU

