正直、油断してたんだよ。
天気は良いし、宝石も大分見つけられた。
仲間と3人でテントを張って、そこそこの夕飯を食べて。
「今日はこの森、平和だな」なんて、寝る前に笑ってたんだ。
まさか、あんなことになるとは思ってなかった。
夜中、なんとなく寒さで目が覚めた。
体が冷えてるというか、下半身に妙な違和感がある。
寝袋の中で手を伸ばしてみたら、あったはずのものがない。
ズボンが。
「…は?」
慌てて飛び起きて、テントのジッパーを開けた。
外はまだ薄暗いけど、目はすぐ慣れた。
そのかわり、見たくなかったものが、すぐ見えた。
俺のズボンを頭にかぶって踊ってる、ゴブリン。
ひとりじゃない。三匹もいる。
俺の、仲間の、たぶん副隊長の。
それぞれのズボンをパタパタ振り回しながら、
「パーンツ! パーンツ!」
と跳ね回ってる。
「や、やめろおおおお!!」
俺の声で仲間も起きてきたけど、
悲鳴と怒号と、なぜか笑いが入り混じって地獄絵図だった。
俺たち、上はちゃんと着てたのに、よりによって下だけ、全部やられてたんだ。
どうやって気づかれずに脱がせたんだよ、マジで。
そのあと、ズボンを追いかけて森を走った。
でもゴブリンは森の地形を熟知してて、こっちが枝に引っかかってる間に消えて行った。
翌朝、俺たちのズボンは木の高いところに干されてたよ。
まるで「お前ら負け」って言われてるみたいで屈辱だった。
あれ以来、俺は寝る前にズボンの紐を固く結ぶようになった。
そして、新人には必ずこう伝えてる。
「寝る前に、ズボンをしっかりと確認しろ。いいな?」
笑うやつもいるけど、俺が目をそらさずに言えば、大体は真顔になる。
だって、パンツだけで森を走る冒険者の気持ちは、経験したやつにしか、わからないからな。
【イラストレーター】
ノグチマリコ(collo)
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【文章】
SATO TAKERU

