#12 安らぎの泉 FOREST&FORTUNE

安らぎの泉 FOREST&FORTUNE

魔法の森の奥へ進める者は、冒険者の中でもほんのひと握り。
足を踏み入れることはできても、無事に戻ってこられる保証はない。
深層には、強大な魔物が財宝の山を守っているとか。
あるいは、人間の言葉を話さない“別の種族”が築いた集落があり、そこでは全く異なる法や文化が息づいている。
そんな噂ばかりが、都市の酒場で語られてきた。
だが、本当のところは誰にもわからない。

魔の森は、中心からゆっくりと、長い年月をかけて広がってきたとされている。
そのため、森の深層には、かつて人々が使用していた建物や神殿、そして今では用途もわからぬ遺物が、静かに埋もれているとも言われている。

そのひとつが、「安らぎの泉」。

深い森に包まれた廃墟の奥。
夜空のように青く澄んだ水面は、まるで呼吸しているかのように静かに揺れている。
その泉には、癒しの力があると伝えられていた。
剣傷を癒し、毒を祓い、心の乱れさえも穏やかにしてくれる。

ある者はそれを“精霊の恩寵”と呼び、またある者は“森が与えし試練の報酬”と称えた。
かつて、この泉のそばに拠点が築かれていた。
迷い込んだ冒険者や、命からがら逃れてきた者たちが、束の間の安らぎを得るために身を寄せた場所。

焚き火の跡、苔むした寝台、割れた魔法瓶。
今ではそのすべてが忘れられ、ただ泉だけが変わらぬ輝きを保っている。

泉は今も人々を待っている。
地図にも記されていないその場所で、
幾星霜を越えても変わらぬ水音とともに、
新たな訪れを、そっと受け入れる準備をしながら。

たとえそれが、次の“迷い人”であったとしても。

【イラストレーター】

女性のイラストを主に描いています。衣装を考えるのが好きです。

▶︎香さんのプロフィールはこちら
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Pixiv:https://www.pixiv.net/users/352576

【文章】
SANO OMITO

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