スカーフを締めて FOREST&FORTUNE
魔の森――
それは、かつて数え切れぬ命を飲み込んだ、深く暗い迷宮。
だが今、この森の入り口に立つ三人の影があった。
「このあたりは、まだ“森”ってほどじゃないな」
ベテラン探索者・ガイルは、木々の合間から差す光を一瞥し、足を止めて仲間たちに声をかけた。
その背には長剣を携え、腰や胸には無数のポーチ。赤いスカーフは、風に揺れながらも彼の威圧感を和らげていた。
「師匠、森ってもっとジメジメしてて、うねうねしてて、ドカーン! って罠とか落ちてるかと…」
そう口を開いたのは、中央にいる新米探索者の少年・ルーク。
あどけなさの残る顔に、誇らしげなスカーフ。実はガイルのを見て真似たものだ。
「キミさ、この森を何だと思ってるの…」
ため息をついたのは右手にいる獣耳の少女・ミナ。
ガイルほどではないが数多くの任務を経験してきた。森の中でその五感と足を活かし、仲間たちを何度も救ってきた斥候役だ。
「ほら見て!さっそく宝石っぽいの見つけた!」
ルークが目を輝かせて取り出したのは、虹色に光る水晶のような結晶。
それを見たミナは、耳をピクリと動かした。
「これは原石ね。残念だけど、あまり価値はないわよ」
ミナがルークの手の中の結晶を覗き込み、さらりと言い放った。
「えっ!?」
ルークは目を丸くして、結晶を見直す。
虹色にきらめいているように見えたが、近づけて見ると確かに内部は濁っているし、どこか欠けてもいた。
「ランプの動力くらいの魔力はあるかもね。ただ、宝石としての価値はないわね。」
ミナが肩をすくめる。
「そ、そんな……!お宝だと思って採掘したのに!」
ルークはしゅんとうなだれ、スカーフをいじりながらぼやいた。
その姿は、まるで遊び場で負けた子どものようだ。
「おい」
ガイルが低く、だがよく通る声で言った。
「お前ら、気を抜くなよ。まだ入り口付近とは言え、魔の森であることに変わりないからな。」
ガイルの声に、ルークとミナが一瞬表情を引き締めた。
「魔物だけが敵じゃないわ」
ミナが淡々と続ける。
「この森には人にとって“有害”な植物も多いの。動かないからって安心しないで」
「植物ってそんなに危ないのか?」
ルークが辺りを見回しながら訊いた。
「たとえば“抱き蔦(だきづた)”。触れると巻きついて、じわじわと毒を流してくる。森の中じゃ倒れるまで気づかない人もいる」
「そして、この辺りで厄介なのはゴブリンよ。」
「ゴブリン!?もう出るのか?」
「出るっていうより、常にどこかにいるわ」
ガイルが短く答える。
「ただし、ゴブリン自体は凶暴ってわけじゃない。むしろ、質が悪いのは“悪戯”の方だ」
「悪戯……?」
「そう、トラップを仕掛けて楽しんでやがる。たとえば――」
その時、ガタンッと音がして、ルークの背負い袋が地面に落ちた。
紐が綺麗に切られている。
「えっ!?な、なんで!?」
「それだ」
ガイルが無表情で答えた。
「細い鋼糸が張ってある。歩いた拍子に引っかかると、荷物の紐を切られる。で、奴らはその音を聞いて、物陰からこっそり拾って逃げる」
「うわ、最悪!ていうか卑怯だろ!」
「相手はゴブリンよ。卑怯なのが普通」
ミナはルークの荷物を拾い上げ、切られた箇所を確認しながら言った。
「そのくせ、見つかると集団で石を投げてくるから面倒なの」
「足止めにも使ってくる」
ガイルが周囲を見ながら続けた。
「偽の足跡を作って誘導したり、わざと罠をわかりやすくして別の場所に本命を仕掛けたりな」
「ゲーム感覚でやってるのかよ…」
「奴らにとってはそうだろうな。森の中では、油断した方が負けだ」
ルークはもう一度、自分のスカーフをきゅっと締め直した。
まるで、それが自分の決意を表すかのように。
森は静かだった。
だが、静かすぎるということは――
誰かが、どこかで彼らの様子を見ているということかもしれない。
【イラストレーター】
風見れご
キャラクターから乗り物・メカ・ミリタリーまで、人物とマテリアルを得意とするイラストレーターです。
今回はテーマは自由ということで、森を探索する冒険者グループを描かせていただきました。
宝物に目を輝かせる少年たち、冒険を見守る年長者、FOREST&FORTUNEをプレイする方それぞれの視点でご鑑賞いただけますと幸いです。
▶︎風見れごさんのプロフィールはこちら
X:https://x.com/ReGO_Kazami
pixiv:https://www.pixiv.net/users/11748216
【文章】
SATO TAKERU

