#9 コボルトのお店 FOREST&FORTUNE

コボルトのお店 FOREST&FORTUNE

魔法の森――
多くの冒険者が挑み、命を落としてきた危険地帯だが、森の入り口や浅層部は比較的安全とされている。
地形は穏やかで魔物の気配も薄く、訓練や実地演習にうってつけの場所。
新人冒険者たちの“はじめてのクエストの場”として親しまれている。

ある朝のこと。

「お〜い! たからもの、いっぱいあるよ〜! いらっしゃいませ〜!」

森の奥から、甲高く、どこか陽気な声が響いた。
冒険者一行は足を止め、仲間たちと顔を見合わせる。

「あれ、コボルトの“おみせ”だな」
「やっぱり。久々に出会えたね」

冒険者たちは笑い合いながら、森の小道を進んでいく。

小さな広場の中央には、毛並みのふさふさしたコボルトが座り込み、手作りの布の上にさまざまな品物を並べていた。
隣には、子どものコボルトも同じように得意げな顔で座っている。

「さあさあ! 今日のはすごいよ! ぼくらがえらんだ、とくべつなたからもの!!」

その言葉通り、布の上には宝石のようにきらめく石、金属の飾り、なぜか骨付き肉の欠片、よくわからないガラクタまで並んでいる。

「これは“静謐のラピスラズリ”。このあたりじゃまず見つからないぞ」
「待って、それって“道標のトパーズ”じゃない? どうしてこんなところに……」

お店に並ぶものは、すべてコボルトが気に入った品物。
そのため、並ぶ品は毎回まったく異なる。
それでも、これほどの宝石が一度に並ぶことは珍しい。

冒険者たちが驚きの声をあげる中、子どもコボルトが胸を張って言った。

「きらきらしてるでしょ! これなんて、いいにおいもするし、かたちもすき!」

「それ、原石に肉汁かかっただけじゃ……?」

小さな笑いが起こるが、どこか和やかであたたかい空気が広がっていた。

冒険者たちがざわつき始める中、親コボルトはにっこり笑いながら、ある一人の冒険者に近づいた。

「くんくん……」

「え? な、なんだ?」

「キミ、いいの持ってるね〜!」

「あっ、バッグの中? 昼に食べようと思ってた……骨付き肉だけど?」

「それとなら交換していいよ! どれでも!」

「……え? どれでも? いいの?」

そしてコボルトが差し出したのは、先ほど本物だと認めたラピスラズリだった。

「じゃ、じゃあ、交換します……?」

おそるおそる肉を差し出すと、コボルトは目をきらきらさせてそれを受け取った。

「やったー! いいにおい! いいにおい! キミ、すっごくわかってる〜!」

横にいた子どものコボルトも、しっぽをぶんぶん振ってぴょんぴょん跳ねていた。

「まじで交換成立した……」
「ちなみに、まだあるよ?」

男が袋からもう一本の骨付き肉を取り出すと、コボルト親子は目を輝かせた。

「ほんと!? それもほしい! こっちも持ってって!!」

差し出されたのは、よくわからない機械の一部だった。

「これはね、森の奥で見つけた、キラキラの部品だよ」

「それじゃないのがいいな……こっちとかどう?」

そう言って指さしたのは、黄色に輝く道標のトパーズだった。
正直、とてもじゃないが骨付き肉と釣り合う品ではない。

「こんなのでいいの? こっちの方が魔力もたくさん入ってるのに」

そうコボルトは言うけれど、よくわからない機械部品より、目に見えて分かる宝石の方が断然うれしい。

「こんなのが良い!」
「変わってるね〜」

コボルトは“におい”や“見た目のきれいさ”で価値を判断しているらしい。
いい匂いのする肉は、とても価値があるものなのだろう。きっと。

帰り際に一人が苦笑しながらつぶやく。

「次からは骨付き肉、大量に持っていこう。あれ、通貨より強いわ」

コボルトのお店がいつ、どこで開かれるのかはわからない。
見つけられるかどうかは、運しだいである。

【イラストレーター】
ノグチマリコ(collo)

▶︎ノグチマリコ(collo)さんのプロフィールはこちら
X:https://x.com/funnycollo
ホームページ:https://hachicollo.myportfolio.com

【文章】
SATO TAKERU

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