#6 魔龍伝説 FOREST&FORTUNE

魔龍伝説 FOREST&FORTUNE

それは、いつの時代のことだったのか。
正確な記録は残っていない。
けれど今も、人々は火のそばでこの話を語り継ぐ。
 
かつて宝窟の魔龍を討とうとした者たちがいた。
彼らは名高い冒険者たちだったという。
三人だったとも、五人だったとも言われる。
いずれにせよ、幾多の試練を乗り越えた精鋭たちだった。
 
目指したのは、森の最奥に眠るとされる伝説の存在。
あらゆる財宝と魔力を喰らい、悠久の時を生きる“宝窟の魔龍”。
 
森は、侵入者を拒む。
進む道をねじ曲げ、枝を絡め、影を深めて惑わせるトレントたち。
彼らは迷路と化した森を、信じる力と仲間への信頼だけを頼りに突き進んだ。
 
その先に待っていたのは、門番のように森を守る巨大なオーガ。
咆哮が轟き、振り下ろされた斧が地を割る。
戦士の剣がその刃を弾き、鎖使いが腕を封じ、弓手の矢が関節を正確に射抜く。
数刻の激闘の末、巨体は地に伏した。
 
そしてたどり着いたのは、誰も知らぬ森の最深部。
地に散らばる魔石の欠片、空気に漂う精霊の残響、空を染める赤い月。
その中心で、赤黒い巨影がうずくまるように眠っていた。
 
宝窟の魔龍。
 
竜はゆっくりと目を開けた。
その気配だけで空気が震え、森が息を呑んだ。
 
「また来たか。小さき者よ。
 財宝か、名声か、それとも、ただの愚かさか。」
 
骨が軋み、血が逆流するような重圧。
それでも、戦士は剣を構えた。
鎖使いは鎖を巻き取り、弓手は矢羽をなぞった。
  
矢が風を裂いた瞬間、戦いが始まった。
 
戦士の剣が竜の脚を狙い、
鎖使いは空中を駆けて翼へ鎖を絡める。
竜が咆哮とともに炎を放ち、
地を這う火が彼らを襲う。
弓手が炎の中から飛び出し、放たれた矢が竜の目をかすめた。
 
「見事だ。だが、それが届くと思うか?」
 
翼が広がり、鎖が弾ける。
衝撃波が森を薙ぎ払い、枝が折れ、地が揺れる。
 
それでも冒険者たちは立ち上がった。
身体は傷つき、装備は限界に近い。
それでも、目の光は消えていない。
 
最後の一矢をつがえる弓手。
剣を握り直す戦士。
崩れた足場を駆け、跳躍する鎖使い。
 
その後のことは、誰も知らない。
 
ただ、森の入口に、焼け焦げた剣の鞘、砕けた留め具、一本の折れた矢が落ちていたという。
彼らは討たれたのかもしれない。
あるいは、戦い抜き、何かを遺したのかもしれない。
 
森は語らない。
だが、魔龍は今も宝石と魔力を喰らいながら、森の深奥で眠り続けているという。
 
それが伝説なのか、真実なのか。
確かめに行こうとする者がいる限り、森の物語は終わらない。

【イラストレーター】
DAY(でい)
イラストレーター&漫画家&パーソナルカラーアナリスト

▶︎DAY(でい)さんのプロフィールはこちら

pixiv:https://www.pixiv.net/users/16720248
X:https://x.com/daysandayo

【文章】
SATO TAKERU

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