#5 森の形をしたもの FOREST&FORTUNE

森の形をしたもの FOREST&FORTUNE

「……あれ? おかしいな」

小さな冒険者は地図をくるくると回しながら、周囲を見回した。
手元の羊皮紙には、確かに“二股に分かれた大きな木の根元”と書かれていたはずだ。
でも、目の前にあるのはどこまでも続く緑の壁と、もっさりとした木の丘。

「地図とちょっと違う気がするけど…まあ、方角は合ってるよな? たぶん…」

不安げにつぶやきながら、コツコツと足音を鳴らす。
その音は、まるで何か中が詰まった太い木材を叩いたような…いや、気のせいだろう。

「地形のせいかな…どこも同じに見えるな…」

そう言って、帽子のつばを直しながら何度も地図を見つめる冒険者。
すると、背後の“枝”がそっと揺れた。

ぴくり、と空気が震える。

だが、彼は気づかない。
自分が今いる場所が木の上などではなく、巨大な生き物の“手のひら”の上だということに。

もふもふとした苔の茂み、横に連なる幹のような太いライン。

「まあ、たぶん合ってる。進もう。きっとこの先に―」

少年が一歩踏み出そうとしたその瞬間、足元が微かに上下に揺れた。
まるで、何かが“呼吸”しているかのように。

けれど彼はまだ、気づいていない。
森の中を探索していると思っていたその場所こそが、 “トレント”そのものだったことを。

トレントは動かない。
このちっぽけな来訪者が、またひとつ森の中でなにかを学ぶまで。

森は生きている。
そして今、その森の“手のひらの上”で、ひとりの冒険者が探索を続ける。

【イラストレーター】
雨音はるじ
新潟在住のイラストレーター・絵本作家。
メルヘンチックな子どもや動物のイラストを描いています。
童話とピアノと新幹線が好きです。

冒険者を迷わす巨大な「トレント」が印象的だったので、今回のテーマに描かせていただきました。
神秘的な森で冒険者が出会う不思議なモンスターが描けて楽しかったです。

▶︎ 雨音はるじさんのプロフィールはこちら
https://amaneharuji.myportfolio.com/

【文章】
SATO TAKERU

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