#14 霧中の隠遁者 FOREST&FORTUNE

霧中の隠遁者 FOREST&FORTUNE

私はどうやら人間をやめてしまったらしい。

魔法の森、中央の大樹にたどり着いたものは誰もいないという天然の迷宮。
幼いころ、その神秘を解き明かすことに憧れて学を修め、身を守る魔術を身に着け、森へと踏み入ったのは果たして何十年前だっただろうか。桁がもう一つ多いかもしれない。

憧れの第一歩、そこで見つけた放棄された拠点。今思えば先人が立ち退いてから幾年も経ったそれが、手をそれほど加えずとも居住できたのもまた、森の不可思議だったことに気づくべきだったのかもしれない。
周りには尽きぬ神秘、異形の魔物たち、調べたいことを思うままに寝食も忘れて研究し、気が付けば魔物の仲間入りとは笑えない。

改めて数えてみれば既に墓の中に入っているはずの歳月が流れて、年一つとった様子すらない容姿。いつの間にか欲求として存在しなくなった食事と睡眠。
いくら好きなことに夢中になっていたとはいえ、ここまで気が付かないことがあろうか。これもまた森の魔力なのだろうか。

そして気づけば、森の外に出られなくなっていた。
あと一歩踏み出せば出られる、決まってその瞬間記憶が霧散し、いつの間にか居住している拠点にいる。なるほど森の魔物が外に溢れてこないのはこのためか、などと学びを喜んでいる自分が虚しい。

ならば、あのころの夢だった森の中央に到達できないかとすると、今度はオーガに阻まれて一定の先に進めたことはない。
彼らは大樹を中心として円形の境界を封鎖している。
数に任せてゴブリンが突破するのや、戦に長けた冒険者が力で打ち倒して先に進んでいるのを見かけたことはあるが、あいにく数も力も持ち合わせていない私にはできない手段だ。
冒険者が空けた穴から突破する、あれが最後のチャンスだったのかもしれないが、運悪く増援がすぐに駆け付けてきたため通ることができなかった。つくづく運がないものだ。

彼らは気配に敏感だ。身を守るための幻惑に特化した私にどうにかする術はない。私は戦士でも冒険者でもなく学者なのだ。すでに人間でもないが。
ならばどうするか、研究し続けるのだ。幼いころに抱いた夢、それだけが今も私を私たらしめる。幸いにも時間だけはいくらでもあるのだから。

【イラストレーター】
浅葱 紫乃
日頃成人男性を中心に描かせていただいています。
今回はとても魅力的な女性キャラクターを描かせていただきました。
深い霧とともに現れ消えて行く謎の女性、敵か味方かもわからないミステリアスな彼女にとても惹かれました。FOREST&FORTUNEをプレイする方皆様のイメージのひとつとしてお楽しみいただければ幸いです。
この度は貴重な機会を頂きましてありがとうございました。

▶︎ 浅葱 紫乃さんのプロフィールはこちら

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pixiv FANBOX:https://sinoasaduki.fanbox.cc/

【文章】
NONAKA SHOHEI

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