俺たちは、冒険者への悪戯が大好きだ。
剣を盗む。
荷物に虫を入れる。
道標を反対向きにする。
上手くいけば、奴らは怒鳴る。
慌てて荷物をひっくり返す。
仲間同士で「お前が持っていたんじゃないのか」と喧嘩を始める。
あれがたまらなく面白い。
冒険者が強いとか、弱いとかは関係ない。
偉そうな騎士ほど、兜の中に木の実を入れてやると大声を出す。魔術師は、杖を隠すと呪文より先に泣き言が出る。盗賊は少し厄介だが、罠を見破った顔をした直後、二つ目の罠に引っかかると最高だ。
面白いことを考えた奴が、一番偉い。
これは俺たちゴブリンのルールだ。
たくさん獲物を倒した奴でもない。
大きな巣穴を持っている奴でもない。
他の奴が思いつかない悪戯で、冒険者を一番困らせた奴が偉い。
だから俺たちは、毎日考える。
木の枝を曲げて、顔に当たるようにする。
宝箱の中に、さらに小さな宝箱を入れる。
その中にも、もっと小さな宝箱を入れる。
最後の箱には「はずれ」と書いた石を入れておく。
この前、それを開けた冒険者は、しばらく黙ったあと箱を谷底へ投げ捨てた。
あれは傑作だった。
ただ、ゴブリンの中にも変わり者はいる。
剣を振る奴。
盾の持ち方を練習する奴。
洞窟の奥で、拾った魔術書を何度も読み返している奴。
まるで冒険者みたいな連中だ。
何が面白いのか、俺にはさっぱり分からない。
冒険者と戦って勝ちたいらしい。
強い魔物になりたいらしい。
中には、森の外へ出てみたいなんて言う奴までいる。
馬鹿げている。
森の外へ出て、どうする。
わざわざ剣を振って、どうする。
冒険者なんて、戦うより転ばせた方が面白いに決まっている。
まあ、俺には関係ない。
今日も森には、冒険者が入ってきた。
三人組だ。
先頭は鎧を着た大男。
その後ろに、杖を持った女。
最後は、大きな袋を背負った小柄な奴。
俺は木の陰から、そいつらをじっと観察した。
大男は足元を見ていない。
魔術師は髪を気にしている。
袋を背負った奴は、何度も後ろを振り返っている。
さて。
落とし穴にするか。
荷物を入れ替えるか。
それとも、魔物の声を真似して脅かしてやるか。
考えるだけで笑いが込み上げてくる。
俺は仲間たちに合図を送ろうとして――止まった。
冒険者たちの向こう側。
一本の枯れ木のそばに、見覚えのあるゴブリンが立っていた。
錆びた剣を握り、冒険者たちを真っすぐ見ている。
あいつだ。
毎日、剣を振っている変わり者。
まさか、本当に戦うつもりなのか。
俺はため息をついた。
仕方ない。
あいつが格好よく飛び出した瞬間、足元の縄を引いてやろう。
冒険者が転ぶか、あいつが転ぶか。
どちらにしても、きっと面白い。
文:モリノシン
